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SHOUJI Ko-ta

Past_2022.09.22―10.07

東海林広太〈パンザマスト〉

SHOUJI Ko-ta

2022年9月22日[木]―10月7日[金]


どこをいくら探してももう見つからないことがある。
それは人だったり場所だったり記憶の中の景色だったりする。
写真を撮るようになってからなんとなく、地元を撮るようになった。きっかけはいくつかあったけどなんとなくが今も続いている。

今でもふと、もう存在しない場所やもう会えない人を探してしまうことがある。記憶の中のイメージはどんどん曖昧になっていく。
撮れる時になるべく全部写そうと思っていたけど写真を見返すと案外撮っていなかった。

窓際の回転椅子、枯れかけの鉢植え、くまの刺繍の帽子、母が育った部屋の壁紙、オレンジのランプシェード、くるみボタンのカーディガン、ポケットに残ってたチョコレート、日でやけたカーテン、部屋を繋ぐバルコニー、壊れた時計、アラミスの香水、ショートホープ2箱、淡い水色のタオルケット、話し声、沈黙した時のTVの音(再放送の時代劇)、笑い方、お茶を注ぐ音、5時のパンザマスト、刺繍の花束、渇いた骨。

実家の前の道は緩やかなカーブで見通しが悪かった。
俺は向こう側がよく見えないその道が好きだった。カーブの先、曲がりきった次の瞬間に全く別の場所に行けるかもしれないと、いつも思っていた。
あの家はもう無いし、買いに行かされた煙草の銘柄と握りしめた小銭の感触しか覚えていない。

撮って残したことより撮っていないことは山ほどある。そういうふうにこれからも続いていく。

東海林広太

東海林広太(しょうじ・こうた)
1983年 東京生まれ。2007年よりスタイリストとして活動した後、2014年から写真家のキャリアをスタート。現在、東京を拠点に活動をしている。2017年に初となる個展「Beautiful」を開催、同年「つぎのblue」、2019年「go see」、「過去に写した時間 誰も知らなかった写真について」、「青い光」、「happen」、2021年「everything matters」、「あの窓とこの窓は繋がっている」を開催。

SHOUJI Ko-ta Website▶ https://ko-ta-shouji.com/
Instagram▶ https://www.instagram.com/ko_ta_s/

今回の展覧会名〈パンザマスト〉とは、東海林さんが育った地域で一部限定的に浸透している言葉であり、5時のチャイムを意味します。

言葉が意味として成立する条件は、自己と他者の認識しているそれぞれの世界や、それを捉える主体等の成立条件によって必ずしも同一ではなく、主体(鑑賞者)に委ねることを前提とした写真自体の持つ性質とも深く関わり合っていると考えることができるでしょう。

東海林さんが「自分の育った場所にかつてはあったもの」と語るように、今回の展示作品は身近な人や身近だった場所、いま目の前にある事象と、かつてそこにあった対象に何らかの変化を見出すことで作品化されています。

「What is photograpy」「写真とは……」。
日記として記された彼のTwitterの文章には、そこに記す事で先入観を解除し、かつては目の前にあった対象を改めて客観的に捉え直すガイドにもなるような、“写真”に対しての考察を見ることができます。

ショップを見る

今回の展示にあたり制作した写真小冊子〈パンザマスト〉は、「ショップを見る」より、通販でもお求め頂けます。


本冊子は、2022年9月、Printed Unionでの「東海林広太〈パンザマスト〉」の開催に合わせて出版されました。
2019年3月31日から12月30日にかけて、日記として記された東海林広太のTwitter文章を抜粋し、写真と言葉を一冊に合わせて綴じています。